日本のIT業界における生成AIの活用について

近年、生成AI(Generative AI)は世界中で急速に進化しています。

生成AIは従来のAIとは根本的に異なり、テキスト、画像、音声などのデータを自動的に生成する能力を持つものを指します。

「キーボードやマウスがないコンピュータが考えられないように、生成AIも当たり前の存在になっていく」とも言われており、これからの社会を大きく変えるテクノロジーであることは間違いありません。

1. 企業における生成AIの活用シーン

■グローバルコミュニケーション

日本の企業では、生成AIの活用によって自然言語処理の領域が大きな進化を遂げています。自動翻訳、文章生成、文書要約、感情分析など、多くのNLPタスクで生成AIが使用されています。これにより、外国語のコミュニケーションや多言語サポートの質が向上し、国際的なビジネス展開にもつながっています。

■コンテンツ生成

生成AIは、ウェブサイトのコンテンツ、ブログ記事、商品説明、広告文の自動生成にも利用されています。生成AIの活用により、コンテンツ作成にかかるコストの削減と、迅速なコンテンツの提供が可能になります。企業は、以前よりも少ないコストでより多くのコンテンツを提供でき、より高い宣伝効果が得られます。

■カスタマーサポート

生成AIの技術を取り入れる多くの企業は、生成AIをカスタマーサポートに活用しています。自動応答システム、チャットボット、FAQの自動生成などが、顧客とのスムーズなコミュニケーションを実現し、24時間対応のサポートを提供可能にします。

2. NTTデータの事例

株式会社NTTデータでは、およそ40年前から自然言語処理に取り組んできました。その技術は世界最高水準で、日本語の文脈においては特に優れています。現在では研究所技術を活用したR&Dを実施し、カスタマーサポートなどの窓口業務への自然言語処理技術の適用を進めています。

また、2023年6月には、生成AIの活用をグローバルに推進するため「Global Generative AI LAB」を設立。先進技術を活用したビジネス創出を目的とする「イノベーションセンタ」が中心となり、生成AIのソフトウェア開発分野への適用、各国拠点の関連ソリューションの展開などを行っています。

具体的には、ソースコード自動生成やチャットボット、文章検索ソリューションなどの文章生成AIを中心にグローバルに展開し、文章読解AIと生成AIを連携した新サービスも提供します。

NTTデータでは、生成AI活用のためのグローバルなガイドラインの策定にも取り組んでいます。

現状、生成AIには様々なリスクがあります。その1つが「AIの幻覚」とも呼ばれるハルシネーション(Hallucination)。生成AIはインターネット上の膨大なデータを学習して答えを導き出しますが、データの正誤は判断できません。そのため、導き出した答えが間違っているという可能性も大いにあります。

また、利用許諾を得ていないデータを学習に用いることで、権利の侵害につながったり、AIで生成したものの著作権が主張できなかったりと、生成AIを実務で活用するためには、まだ多くのハードルが残されているのです。

Global Generative AI LABでは、そうした課題を解決するために、各国の法規制や倫理・社会受容性へ配慮した、生成AIのガイドラインの策定を目指しています。

3. NECの事例

NEC(日本電気株式会社)は日本の企業としては唯一、AIの評価として用いられる最難関学会での論文採択数がグローバルトップ10に入っています。

NECグループでは、50年以上も前からAIの研究開発をしており、独自のAI技術ブランド「NEC the WISE」を展開しています。

生成AIの分野においては、顧客に合わせてカスタマイズ可能な生成AIを開発し、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)のライセンスから日本市場のニーズに合わせた専用のハードウェア、ソフトウェア、コンサルティングサービスなどを提供する「NEC Generative AI Service」を2023年7月よりスタートしました。

また2023年5月より、NEC社内でも生成AIの業務での利用を開始しています。社内チャットやWEB会議ツールと連携しての活用が進んでおり、資料作成や議事録作成、社内システムのソースコード作成等にかかる時間を大幅に短縮できているといいます。

まとめ

日本の生成AIの活用は多岐にわたり、多くの分野で効果的に活用されています。

例に挙げたNTTデータやNECなどの大企業では独自のAI開発が進められており、すでに成果も得られつつあります。

生成AIの進化によって、効率性の向上、コスト削減、新たなビジネスチャンス創出が実現し、国際競争力の強化に役立っています。

今後も生成AI技術は進化し続け、新たな可能性を切り拓いていくでしょう。